Q 糖尿病をほうっておくとどうなるのですか?  −慢性合併症−          

A  糖尿病は多くの場合、初期には自覚症状がなく、健診などで偶然に発見されることも少なくありません。自覚症状を引き起こさない程度の高血糖であっても、数年ー数十年の長期間にわたって続くと、慢性合併症が高い頻度で発生します。

 糖尿病の慢性合併症には、大きく分けて目、腎臓、神経の障害を起こす
細小血管症と、
脳卒中、心筋梗塞、壊疽などを起こす大血管症があります。


1.細小血管症 (microangiopathy) ・・・細い血管が高血糖により障害を受けて、糖尿病の「3大合併症」といわれる、目、腎臓、神経の障害が起こります。

a. 目の障害(糖尿病網膜症):
 失明の原因の上位を占めています。高血糖のために網膜の血管にこぶが形成されたり、血栓ができて詰まったりすることが原因で、視力が著しく低下します。早期に発見して治療(レーザー光凝固療法)することによって視力低下の進行を抑えられるので、糖尿病の患者さんは定期的な目の検査がぜひとも必要です。

b. 腎臓の障害(糖尿病性腎症):
 慢性腎不全で透析療法に導入される原因の第1位となっています。ごく早期には、普通の尿検査では尿タンパクが陰性でも、「微量アルブミン」が陽性になることがあり、この時期に早期発見、早期治療を受けることが大切です。腎症の進行を予防するためには血糖のコントロールとともに、血圧のコントロールがとても大切です。アメリカ糖尿病学会の勧告によれば、糖尿病患者の血圧値は130/80以下とされています。

c. 神経の障害(糖尿病神経障害):
 
初期には手足の先のしびれ、痛みで始まり、次第に感覚の低下、筋肉の萎縮などが出てきます。自律神経の障害が発生すると、立ちくらみ、排尿や排便の障害が出現し、患者さんの生活の質が損なわれます。
自律神経障害は突然死との関連も疑われています。


2.大血管症 (macroangiopathy) ・・・数ミリ以上の大きい血管の障害により、脳卒中、心筋梗塞、末梢動脈閉塞による壊疽が起こります。

a. 脳卒中(脳梗塞、脳出血):
 日本で行われた大規模研究(久山町研究)によれば、糖尿病の男性は,そうでない人に比べて脳梗塞の危険度が4.37倍でした。高血糖のために動脈硬化が進行するほか、血栓、塞栓症を生じやすい状態が脳梗塞の発症につながるものと考えられています。予防のためには、血糖、血圧のコントロールが重要です。

b. 虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症):
 糖尿病患者の心筋梗塞発症率は、健康人に比べて2-4倍に増加しているといわれています。また、糖尿病患者に起こる虚血性心疾患の特徴として、

痛みがはっきりしないことがある
心不全を合併することが多い
多枝病変(2本以上の冠動脈の病変)が多い

など、より危険な要素が多いことが知られています。
予防のためにはやはり血糖と血圧の厳格なコントロール、日常の適度な運動、野菜や果物の摂取、コレステロールの低下、アスピリンの服用などが有効です。

c. 足病変(壊疽):

 糖尿病性の動脈硬化で血液の流れが悪くなること、感染症に対する抵抗力が低くなること、神経障害のため足の傷の痛みを感じにくいこと、などさまざまな要因が重なって足の潰瘍・壊疽が発生します。
血糖のコントロールの他、日常から足の小さな傷や皮膚の亀裂などに注意することが必要です。



 糖尿病の怖いところは、これらの合併症がいずれも生命を脅かすことがある重い疾患であることです。また、自覚症状がなく自分が糖尿病であると気付かないうちに合併症が進行するため、視力が落ちてきて始めて糖尿病と網膜症に気付く、といった場合もあります。

 定期的な健康診断と、異常を感じたときの早めの受診が肝心ですね。














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