Q 葉酸やビタミンB、B12を摂ると心臓にいいと聞いたのですが?

A ホモシスチン尿症というまれな遺伝性の病気があります。

 この病気の患者さんは、ホモシステインというアミノ酸を分解する酵素を生まれつき持たないために、血液中にホモシステインがたまります。その結果、若いうちから心筋梗塞、脳卒中、肺動脈塞栓症などを起こす事が知られています。

 ホモシスチン尿症の患者さんが糸口になって研究が進み、

血液中のホモシステイン濃度が上昇すると動脈硬化が強く進む

ことが明らかになりました。

 血液中のホモシステイン濃度が高いと心筋梗塞の危険が高くなる、という証拠を示す研究はいくつか報告されています。

                    ホモシステイン

           

 冠動脈疾患患者の男女587人を4.6年間追跡調査した研究では(New England Journal of Medicine 337 230-236, 1997)、血液中ホモシステイン濃度が15.0μmol/L以上の人の死亡率が24.7%であったのに対して、9.0μmol/L以下の人の死亡率は3.8%でした。

 血液中のホモシステイン濃度が高いことが心筋梗塞と、それによる死亡の危険因子であるということはすでに確立した事実として認められています。

 体内ではDNAの合成に際して、ホモシステインが必須アミノ酸のひとつであるメチオニンに変換されますが、その際に葉酸の存在が必要です。(同様に、ビタミン、B12もホモシステインを分解するときに必要です。)

 2001年にアメリカ心臓協会の医学誌”サーキュレーション”に掲載されたフィンランドの研究グループの論文によると、1日に食品から葉酸を211μg以下しか摂らない人のグループに比較して、297μg以上摂る人のグループでは心筋梗塞のリスクが55%低下しています(Circulation 103 2674-2680, 2001)。

 葉酸サプリメントを飲むと血液中のホモシステイン濃度が下がることが知られています。

 そのため、葉酸摂取量を男性で1日350μg以上、女性で280μg以上に上げると、1年当たり男性30500人、女性19000人が心血管疾患による死亡を防げる、という推計がされています(JAMA 274 1049-1057, 1995)。同様に、ビタミン、B12を多く摂ることによって血液中のホモシステインが下がり、心筋梗塞や脳卒中が防げる、という可能性も充分考えられます。

 ただし、葉酸やビタミンB、B12のサプリメントが心血管病を防いだ、という直接のエビデンスはまだありません。

 現時点で確実に言えることは、葉酸を豊富に含む野菜類、特にホウレンソウなどの緑色の葉野菜、果物、豆類を充分に摂ることが、心血管病のリスクを下げるということです。

 葉酸のサプリメントは、おそらく心血管病リスクを低下させると思われますが、いまのところ推測の域を出ていません。

 同様に、ビタミンは鶏肉、牛肉、野菜、豆類、果物から、ビタミンB12は牛肉、鶏肉、魚類から摂ってください。これについてもサプリメントで食物から摂るのと同じ効果があるかどうかは明らかではありません。


注1:総合ビタミン剤を摂っている女性の心筋梗塞リスクが摂っていない女性より24%低かった、という論文は出ています。(Nurse's Health Study)  しかし、各種ビタミン、サプリメントが心血管病のリスクを下げなかった、という論文も数多くあり、現時点では結論は出ていません。

注2:AHAの勧告では、リスクの高い人は空腹時の血液中ホモシステイン濃度を測定し、10.0μmol/L以上の場合はビタミンのサプリメント(葉酸0.4mg、ビタミン 2mg、ビタミンB12 6μg)を毎日摂取することを勧めています。 (当院でも血液中ホモシステインの測定を行っています。)



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