Q コレステロールを下げる薬(スタチン類)の癌予防効果

A 高コレステロール血症の治療薬として、スタチン類は広く使われています。メバロチン、リポバス、リピトール、ローコール、リバロといった薬がこのグループに属しています。

スタチンには悪玉(LDL)コレステロールを低下させる作用があり、心筋梗塞や脳卒中を予防する効果、総死亡率を低減する効果があることがエビデンスとして認められています。

スタチンは、コレステロールを低下する以外にもさまざまな薬理作用を持つことが知られています。そのため、悪性腫瘍の発生率との関連についての大規模な検討が重ねられてきました。

以下は7月26日のネイチャー・メディシン誌に発表された内容です。

スタチンが乳腺、膵臓、前立腺、及び肺がんの危険を約50%低下させる、という研究結果が、4月と5月の癌関連の学会で発表されました。いくつかの研究を合計すると、500,000人以上が対象となる、きわめて大規模な疫学研究の結果です。

現在までの疫学研究の結果から、スタチンを服用している人は

膵臓がんの危険が59%低下していること、
前立腺がんの危険が50%低下していること、
大腸、直腸のがんの危険が49%低下していること


が示されました。(New England Journal of Medicine 352, 2182-2192; 2005)


シアトル在住の女性2,000人を対象にした研究によれば、平均で5年間スタチンを服用している人たちは、そうでない人たちに比較して乳がんの危険が30%低下していました。(Cancer 100, 2308-2316; 2004)

同じグループが現在、84,000人を対象にした14年間に及ぶ大規模前向き研究を進行中です。スタチンの服用と乳がん、前立腺がん、生殖器のがんの発生率を検討するもので、2006年に結果が出る予定です。

スタチンによって心筋梗塞などの心血管病が予防されることは以前から明らかになっていましたが(Q&A 10, コレステロールを下げるお薬をずっと飲んでいても大丈夫ですか? 参照)、さらにスタチンによるがん予防効果が示されつつあるわけです。

以前からスタチン類には、コレステロールを低下させる作用の他にさまざまな多面的作用があることが知られてきました。たとえば実験室のレベルで、がん細胞の成育を阻害したり、浸潤を抑制したり、がん細胞の放射線に対する感受性を増して細胞死に導いたり、といった作用を持つことが証明されています。

このため、がん予防の疫学のデータが出てくるのは理にかなっているといった見方がされています。

今後、さらに研究が続けられるものと思われますが、がんを予防するという明確な証拠がある薬物は多くありませんから、スタチンには大きな期待が寄せられています。








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