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  野菜や果物が健康にいい!ということは、以前から経験的に知られてきましたが、実際にどれだけの野菜や果物を摂ると何がどれくらい改善するのか?という点についての大規模な医学研究は、最近までは意外なほどに数少なかったのです。

脳卒中の発症と野菜、果物の摂取量の関係について、アメリカで1976年から行なわれてきたNurses’ Health Study (ナースの健康研究)と、1986年から行なわれてきたHealth Professional Follow-up Study(医療従事者追跡調査)の二つの大規模前向き研究の結果を総合した論文が1999年に発表されています。

 前者では34−59歳のナース75、596人を14年間、後者では40−75歳の男性医療従事者38、683人を8年間観察しています。

 参加者はすべて、心臓病、癌、糖尿病にかかっていないことを最初に確認された上で、野菜と果物の摂取量によって、5つのグループに分けられます。そして、グループごとに
脳卒中を発症する率を調べました。観察期間中に366人の女性と204人の男性が脳卒中を起こしました。

 対象者たちは1日当たりの平均で女性5.8品目、男性5.1品目の野菜か果物を摂っていました。この中で、野菜と果物を摂る量が最も多い5分の1(1日当たり女性10.2品目、男性9.2品目)に入る人たちは、野菜と果物を摂る量が最も少ない5分の1
(1日あたり女性2.9品目、男性2.6品目)に入る人たちに比べて、脳卒中を起こすリスクが31%低下していました。量的な関係をより詳しく調べると、1日あたり野菜か果物を1品目増やすと、脳卒中のリスクが女性で7%、男性で4%、全体では約6%減少する、ということがわかりました。

 中でも、特に効果が高かったのは、
ブロッコリー、カリフラワー、キャベツやカブなどのグループの野菜(1日1品目で32%のリスク低下)緑色の葉野菜(21%のリスク低下)、かんきつ類を含むフルーツジュース(19%のリスク低下)かんきつ類のジュース(25%のリスク低下)、などでした。この研究からは、豆類と芋類の予防効果ははっきりしませんでした。(Journal of the American Medical Association 282 1233-1239, 1999)

同じ二つの大規模研究から、心筋梗塞の発症と野菜、果物の摂取量の関係について調べた研究結果は2001年に発表されています。これによれば、野菜と果物を摂る量が最も多い5分の1に入る人たちは、最も少ない5分の1に入る人たちに比べて、心筋梗塞を起こすリスクが20%低下していました。1日あたり野菜か果物を1品目増やすと、心筋梗塞のリスクが約4%減少する、中でも、緑色の葉野菜ビタミンCの豊富な野菜、果物類のリスク低下効果が際立っていた、という結論が出ています。(Annals of Internal Medicine 134 1106-1114, 2001)

デンマークのグループも同様の結果を報告しています。

 1993年から1997年にかけて54,506人の男性と女性のデンマーク人について行なわれた前向き研究では、野菜と果物の摂取量が最も多い5分の1に入る人たち(中央値1日673g)は、最も少ない5分の1の人たち
(中央値1日147g)に比較すると、
脳梗塞のリスクが28%低下していました。

 この関係は特に
果物の摂取について明らかでした。果物に限ってみると、摂取量が最も多い5分の1に入る人たちは、最も少ない5分の1の人たちに比較して、脳梗塞のリスクが40%低下していました。この研究グループは、“果物を食べる量を増やすと脳梗塞のリスクを減らせる”、という結論を導き出しています。(American Journal of Clinical Nutrition 78 57-64, 2003)

2003年には、フィンランドのKuopio大学のグループが1984年から行なってきた大規模研究の結果が発表されています。(Journal of Nutrition 133 199-204, 2003)

 42−60歳のフィンランド人男性3、235人を対象として、平均12.8年の観察期間に起きた
心血管病による死亡、および総死亡(原因を問わない)の率と、野菜、果物、ベリーの摂取量の関係を調べました。この研究でも、野菜、果物、ベリーの摂取量に応じて対象者を5つのグループに分けました。芋類は野菜の中から除外されています。

 最も多いグループは1日あたり408gを上回る量、2番目は294−408g、3番目は215−293g、4番目は133−214g、最も少ないグループは133gを下回る量の
野菜、果物、ベリーを摂っていました。摂取量の最も多いグループは、最も少ないグループに比較すると、総死亡率が0.66、心血管病による死亡率が0.59、心血管病以外の原因による死亡率が0.68、とそれぞれ30−40%リスクが低下していました。

 興味深い点は、ある特定の病気を予防するだけではなく、総死亡率を明らかに下げている、言い換えれば、野菜、果物、ベリーを多く摂る人のほうが、少ししか摂らない人に比べて、より長生きする、ということが統計的にはっきり示されたことです。余命を伸ばす、すなわち死亡率を下げることが予防医学の究極の目的ですから、この研究で示された
野菜、果物とベリーの“長生き効果”は非常に大事な意味を持っています。


 イタリアで30年間にわたって行なわれた大規模研究も、野菜と果物による長生き効果を示しています。

 1965年の時点で45−65歳の、北イタリアと中央イタリアの田舎の小さな村に住む男性1536人を対象として、その後30年間観察した研究です。野菜を1日あたり20g以下しか摂らない人に比べると、60g以上摂る人の平均余命は1.8年延びていました。

 中でも、喫煙者に限って言うと、野菜と果物摂取によって2.1年も余命が延びることがわかりました。

 この論文では、野菜や果物を食べる量が年々減る傾向にある現代のイタリア人の食生活に警告を発して、
伝統的な地中海ダイエットに回帰するようにすすめています。(Annals of Epidemiology 13 424-430, 2003)

                                                   つづく・・・