1.スクアレン
オリーブオイルは1kg中に500-700mgのスクアレンを含んでいます。
スクアレンの最も際立った効果は、HMG-CoA還元酵素という、体内でのコレステロール合成に重要な酵素の活性を抑えるというものです。結果として血液中のコレステロールは低下します。
現在病院で高脂血症の患者さんに最も多く処方されている薬であるスタチン類(メバロチン、リピトールなど)はこのHMG-CoA還元酵素を阻害するようにデザインされています。そして、スタチン類にはコレステロール低下作用の他に直接動脈硬化を抑えて、脳卒中や心臓病を減らす多面的な作用があることもわかってきています。ですから、スクアレンを多く含むオリーブオイルは天然のコレステロール低下物質、抗動脈硬化物質ともいえます。
さらに、スクアレンには体内に発生する有害なフリーラジカルを除去する作用、フリーラジカル・スカベンジャーとしての作用があることも明らかになっています。
フリーラジカルは強い酸化作用を持つため、体の細胞の遺伝子を傷つけて、癌の危険を増やします。したがって、フリーラジカルを除去する物質は癌の発生や進行を抑えるのです。
実験室のレベルでは、大腸癌、皮膚癌がスクアレンによって抑えられることが証明されています。(Carcinogenesis 19 287-290, 1998, International Journal of Cancer 52 950-952, 1992)
大規模研究で示されたオリーブオイルの癌予防効果の一部は、このスクアレンの作用によるものといえます。
2.ポリフェノール
オリーブオイル特有のフルーティーなアロマと、少し刺激的でにがみを帯びた味を作り出す元となっているのがポリフェノール類、中でもオルーロペイン(oleuropein)です。
未熟なオリーブの実には多量のオルーロペインが含まれていますが、熟するとともに次第に分解されて、ハイドロキシタイロソル(hydroxytyrosol)などのほかのフェノール類に変化してゆきます。こうしてオリーブの実の中で多種類のポリフェノールがブレンドされて、独特の芳香が作られます。
オリーブオイルの中でも、“エキストラバージン”と呼ばれる最高品質のものだけに豊富なポリフェノール類が含まれています。エキストラバージンの条件は、オリーブの実をただ搾って得られる、何も化学的な処理をしていないオイルで、酸度が1%以下のものということです。
それ以外のグレード、“ピュア・オリーブオイル”とか、ただ単に“オリーブオイル”と表示されているものには、有効なポリフェノールは期待できません。これらは高すぎる酸度を下げるために行なわれる精製処理の過程で、ポリフェノールを失っているからです。
良質なエキストラバージンオイルには、500-700ppmのポリフェノール類が含まれています。
オリーブオイルに含まれる主要なポリフェノール類であるオルーロペインとハイドロキシタイロソルは、どちらもLDLの酸化を抑えることがわかっています。(Life Sciences 55 1965-1971, 1994)
また、これらの物質がフリーラジカル・スカベンジャーとして働くことも証明されています。(Biochemical and Biophysical Research Communication 247 60-64, 1998)
これらのポリフェノールの抗酸化作用が、ひまわり油よりもオリーブオイルのほうが強い抗動脈硬化作用を示す原因と思われます。その他にも、ハイドロキシタイロソルには、
- 血小板凝集能を抑えて血栓をできにくくする作用
- トロンボキサン(血栓を作りやすくする)の生成を抑える作用
- ロイコトリエン(炎症を起こす、喘息の悪化因子になる)の生成を抑える作用
- アラキドン酸の代謝を抑えることによって、炎症を抑制する
などの作用があることが、実験室のレベルで証明されています。
これらはいずれも、血管にある動脈硬化性のプラークが破裂して血栓ができ、血管が詰まるという一連の現象を防ぐ効果につながると考えられます。つまり、直接的に心筋梗塞や脳梗塞の予防につながるわけです。
このように、オリーブオイルに含まれるポリフェノール類は、独特の味と香りを作り出しているだけではなく、健康にすばらしく有益な物質であることがわかります。
3.その他
そのほかにもオリーブオイルの中にはトコフェロール(ビタミンE)、カロテノイド、フラボノイド、ルチンなどの健康に有用なファイトケミカルが含まれています。
オレイン酸とさまざまなファイトケミカルを豊富に含むオリーブオイルは、成人病予防の切り札ともいえる、理想的な食品です。
1日に20-30g、テーブルスプーン2杯程度のオリーブオイルを毎日摂りましょう。この際、以下のようなことに注意すると、より効果的です。
エキストラバージンオイルを選ぶこと | ポリフェノール類の含有量が、ほかのグレードのオリーブオイルよりもはるかに多いからです。もちろん味と香りも一番優れています。 |
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なるべく加熱せず、料理に後からふりかけるような使い方をすること | 加熱によって脂肪酸の酸化が起きると、抗動脈硬化作用が弱まります。揚げたり、焼いたりするのには使わないようにしましょう。 |
野菜と一緒に食べること | 野菜に含まれる脂溶性のビタミン、ビタミンA,D,Eなどの吸収を良くします。 |
サラダドレッシングにいれたり、ラタトウイユ、カポナータのような野菜料理にかけたり、バターの代わりにパンにつけたり、といった食べ方がよさそうです。
EPAの豊富なイワシをオリーブオイルでマリネにしたもの、なども究極のヘルシー料理といえますね。
バター、クリーム、肉の脂身、ラードなどの動物性脂肪をできるだけ減らして、代わりにオリーブオイルを摂るようにするだけでかなりの心血管病予防効果が期待できます。
ただし、オリーブオイルといえども油です。1gあたり約9kcalありますから、食べすぎには注意してください。特に糖尿病などでカロリー制限を受けている人は、1日のメニューの中で全体のカロリーが多すぎないように十分計算の上、使ってください。