ナッツに由来するいろいろな有用な物質が知られています。
食物繊維
ナッツ類には、食物繊維がとても豊富です。たとえば、ピーナッツ30gには約2.5g、アーモンド30gには約3.6g、クルミやカシューナッツ、ピスタチオにもほぼ同じくらいの食物繊維が含まれています。
数年前に、1日あたり食物繊維を10g多く摂ると、心血管病のリスクが19%低下するという、女性を対象とした研究結果が発表されました。(Journal of the American Medical Association 281 1997-2004, 1999)
また最近の、3558人の男女を対象にした前向き研究でも、食物繊維(シリアル、果物、野菜に由来する)を多く摂っている人は、そうでない人に比べて20-30%心血管病のリスクが低くなるという結果が出ています。(Journal of the American Medical Association 289 1659-1666, 2003)
これらの結果から、週に数回ナッツを食べると、食物繊維に由来する数%のリスク軽減が得られることが予想されます
ファイトケミカル
このほかにもナッツには、ルテオリン、ケルセチン、ルチンなどの多種類のフラボノイドが含まれています。
フラボノイドには、炎症を抑える作用、抗酸化作用、癌細胞の増殖を抑える作用など、生体にとって有益なさまざまな作用があることが証明されています。
また、大規模な疫学研究によって、フラボノイドを多くとるほど心筋梗塞のリスクが減ることも証明されています。(Lancet 342 1007-1011, 1993)
ピーナッツには、レスベラトロール(resveratrol)が豊富に含まれています。あの、赤ブドウの皮に由来する、赤ワインの中にある抗酸化物質です。レスベラトロールには、
- 脂質の過酸化を防ぐ
- 酸化LDLの生成を抑える
- 血小板の凝集を抑えることにより血栓を予防する
などの抗動脈硬化作用があることがわかっています。
また、癌の発生や進展を抑える効果があることも報告されています。(Science 275 218-220, 1997)
レスベラトロールはピーナッツの中でも特に渋皮の部分に豊富に含まれていますから、できるだけ渋皮も一緒に食べるようにしたほうがいいですね。
レスベラトロールには強い抗菌作用もあります。ブドウは糸状菌が感染するとレスベラトロールを合成して菌に対抗しようとします。そのため、レスベラトロール合成能が高いブドウの品種ほど病気に強いことが知られています。
その他、ナッツ類はビタミンB群、ビタミンE、カリウムやマグネシウムなどのミネラルを多く含み、健康に有益な作用を持っています。
これらのナッツの心血管病の予防効果に関するエビデンスの積み重ねを受けて、アメリカのFDA(食品医薬品局)は、2003年7月に、ナッツを含む食品のラベルに、以下のような記載をすることを認可しました。
“Scientific evidence suggests but does not prove that eating 1.5 ounces per day of most nuts as part of a diet low in saturated fat and cholesterol may reduce the risk of heart disease.”
“低飽和脂肪、低コレステロール食の一部として毎日1.5オンス(約42.5g)のナッツを食べると心臓病のリスクが低下することが、科学的なエビデンスから示唆される、ただし証明はされない”
今までの数多くの研究の結果からするとかなり控えめな表現に思えますが、とにかくアメリカの政府機関が正式にナッツの予防効果を認めた、という点では画期的なことだといえます。
毎日の食事の中にいろいろなナッツを取り入れてみましょう。
スナックとして、サラダやパスタのトッピングとして、あるいはトーストにピーナッツバターを塗って。毎朝のトーストにつけるバターをピーナッツバターに替えるだけでも、かなりの心血管病予防効果が期待できます。
また、アーモンドやクルミ、ヘーゼルナッツやカシューナッツなどを小瓶に入れて、テーブルに置いておくのもいい方法です。見た目も楽しい上に、ちょっとおなかがすいたときにポリポリかじることが健康につながるわけですから。ただし、食べる量には注意が必要です。
ナッツ類は一般的に、その50-70%が脂肪です。いくら健康にいいオレイン酸やα-リノレン酸が中心だといっても、脂肪は1gあたり約9kCalありますから、ナッツ類はきわめて高カロリーです。ついつい必要以上に食べ過ぎてしまうと、余分なエネルギーを摂ることになり、肥満につながりかねません。FDAの勧めるように、40g程度を目安に食べるのが良さそうです。